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Pick up

ATOLL DAC100 (1) First impression
DAコンバーターとしての音質は、CDプレーヤーのデジタル出力から接続すれば確かめることができる。やや暖かみを帯びて歪みっぽさがなく、上下にストレートに伸びた印象の音調である。濁りがなくナチュラルなのは、これまでのアトール製品とりわけプリメイン・アンプと同質といっていい。
CDをメモリーなりHDDなりにコピーする、いわゆるリッピングによる再生が、どうやら本格的なものになってきたようだ。

現在はまだディスクからのコピーが一般的だが、もう少し視野を広げればインターネット配信もソースに含まれる。

そうなればわざわざディスクに焼いてパッケージソフトとして販売する必要はなく、資源の節約になるばかりか、CDになる前のマスターレベルのソースを直接入手することも可能だ。
現にそうした配信サービスを行っているサイトもあるから、決して非現実的な話ではない。

CDの制作にはいくつかの工程がある。

レコードと同じように最終的にプレスでディスクができあがるまでには、ガラス原盤のカッティングから始まって凸盤凹盤を繰り返して作り、最後にようやくCDが完成する。

デジタルだから劣化はないとはいっても、機械的な精度は関係するから、最初のマスター(多くはHDD)に収録された音とは鮮度が違うのは当然だ。

配信ならこのマスターと同等の音が、手元まで届くことになる。

問題はこうして配信されたソフトを受けるのがPCだけだということにある。
PCに収めたはいいが、その先どうやって再生するのか。
PCにヘッドフォンをつないで聴くのでは、せっかくの音質を生かすことは難しい。
PCから接続できる再生装置はないものか。そういうことをずっと考えてきた。

メーカーでもことの重要さにようやく気がつき始めたようだ。

PCやメモリーをソースにするなら、CDのピックアップ機構は必要ない。USBがつながる単純なDAコンバーターがあれば十分である。

iPodを対象としたドックと呼ぶ一種のデコーダーは、すでに広く出回っている。しかしこれらはiPod専用でPCとの接続に対応していないだけでなく、カジュアルな製品が多いのも事実である。
もっと本格的なオーディオに対応した、ハイエンドとはいわないがせめてフルサイズのUSB DACがどうしてないのだろう。

メーカーとしては、iPodやUSBはまだ本格的なオーディオソースとして認識していないのかもしれない。あるいはカジュアルな用途が圧倒的にウェイトを占める現状では、ハイファイレベルのUSB DACを出しても需要はないと踏んでいるのか。いずれにしてもPCまでは最高品質のソースが来ているというのに、それを生かせないのは残念なことである。

このように思っていたところへ、ようやく思っていてとおりのものが出た。それも思いがけないところから出た。アトールである。さすがに若いメーカーは対応が早い、と感心したものだが、ともかくこのDAC100というのがこれからの鍵だ。

DAC100はフルサイズより一回り小さい、おそらくA4サイズのDAコンバーターである。 通常の同軸および光のデジタル入力3系統を持ち、 またBタイプ(角型)のUSB入力1系統を備えている。 さらにデジタル出力も可能で、USBからの入力も同軸ないし光ケーブルで出力することができる。


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Rear view of appliance :
1Analog Outputs(Left & Right)
2Digital Output (coaxial)
3Digital Output (optical)
4Input 3 (coaxial)
5Input 3 (optical)
6Input 2 (coaxial)
7Input 2 (optical)
8Input 1 (coaxial)
9Input 1 (optique)
10USB Input (B type)
11Power plug (& fuse protection)

 普通ならCDプレーヤーのグレードアップ用と考えるところだろうが、 なんといってもポイントはUSBだ。メモリーやiPodには対応しないが、 PCからは確実に入力することができる。またデジタル出力はCD-Rを焼くときなどに便利だろう。 ともかくこれ1台があることで、PCの可能性が大幅に広がるのである。CD-Rを作るにしても、 スタジオクオリティのソースからじかに焼く方が、ずっと音はいいはずだ。

 DAコンバーターとしての音質は、CDプレーヤーのデジタル出力から接続すれば確かめることができる。 やや暖かみを帯びて歪みっぽさがなく、上下にストレートに伸びた印象の音調である。 濁りがなくナチュラルなのは、これまでのアトール製品とりわけプリメイン・アンプと同質といっていい。 むしろそれよりもっと伸びやかなのは、世代的に新しいからかもしれない。
DACチップには、バーブラウン製PCM1796をディファレンシャルで使用しているようだ。 また電源トランスはアナログ回路用とその他を独立させて、2基搭載している。デジタル入力は192kHzまで対応する。

 さてUSB入力はPCからの接続だ。音は…出る。確かに出る。これで一安心だが、それで満足したわけではない。 本質的にCDとは違うのだ。何が違うかといえば、基本的なS/N。PCだからHDDから読み出しているわけだが、 それでもCDのドライブメカに比べれば回転ノイズは少ないし、それが音に乗るということがない。またエラーも少ないだろう。 CDではエラー補正だけでも常に演算回路が働いている。ピックアップのサーボも同じことだ。それらがないということは、 機械全体の静かさにつながる。USBの後でCDを聴くと、どこかざわざわした感じが残るのはそのせいといえる。

 背景が静かなのと音に絡む汚れがないのとで、PCからの再生は伸びやかで彫りが深い。鮮度が高いというべきか、 一音々々がぱりっとしている。わずかに腰が高くなるのはPCのくせであって、そこがメモリーとは違うところかもしれない。 しかし信号がダイレクトに伝わってくるという活きのよさは、やはりUSBならではのものである。

 DAC100はいわば標準機という位置付けであろう。DACそのものにもアナログ回路にももっと凝ることは可能だろうが、 そんな必要はないのかもしれない。ソースの鮮度が上がれば、標準的な回路でも十分高度な音質を得ることができる。 PCに限らずメモリーやiPodなど、ディスクに代わるメディアが主役になると思われるこれからのオーディオで、 システムの要となるのがUSB DACだ。その先駆けとしてDAC100の持つ意義は大変大きいといわなければならない。(子)