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2009 1121  FILE 2 DYNAUDIO FOCUSシリーズ 長江 良光さん

「この出会いは偶然じゃないですよ、必然に出会っている。」

初めて見る日本海は、コバルトブルーに輝いていた。
沖を見渡せば、深い碧に吸い込まれそうになる。
時折、小雨の降る中、北陸の海岸線を走る。
左手に見えるはずの立山連峰は、すっかりと厚い雲に覆われている。
長江さんの職場はそんな自然に囲まれた場所にある。
「はじめまして。」と挨拶すると、ゴーグルの奥から目尻にしわを寄せ、厚いグローブを脱ぎ、固い握手を交わした。
職人の手は温かい。

「そうだなぁ、ディープパープル・・・レッド・ツェッペリン・・・そう、ピンク・フロイドは毎日のように聴いていたなぁ。
デビッド・ギルモアが好きなんだ。シド・バレットの頃じゃなくてギルモアなんだ。今でも、その音は色褪せてないよ。
兄貴の影響なんだよ。当時はビートルズなんかも聴いていたんだけど、そんなやわな音楽じゃだめだ!これを聴いてみなと言われてねぇ。 ハードロックやプログレッシブロックに明け暮れていたね。」

長江さんとの話は、音楽の軌跡から始まった。

仕事について

「不安だらけでしたよ。営業畑で10年やってきましたけど、その前は美容師だったんですよ、実は。 ものつくりは全く知らないんで、いろんな要望に驚愕する毎日でした。」

長江さんはシザーズジャパンを経営し、今では業界で知らない人がいないほどのカリスマ職人である。
成功した現在でも、人との出会いを大切にし、あっけらかんと創業当時の苦労話を聞かせてくれた。

「うち、その会社と喧嘩になってしまったんです。その会社は最終的には半製品でなくて製品でうちから物買えと。
で、急に半製品やパーツ類が入ってこなくなったんで、自分で作るしかなくなってしまったんです。
だからそれまでは、えっと、機械は一台しかなくても足りてたのに、急にそっから凄かったね、おかあさん。あっからやろねぇ・・・。 もう、その時点ではっきりいって会社は絶望的だったんですよ・・・。な、お母さん。」

そう言いながら、料理を作っている奥さんである千昭(ちあき)さんに同意を求めている。
千昭さんは、深く頷き、
「そうねぇ、大変だったわねぇ。」と呟いている。
波乱な日々のことを覆い隠さず淡々と話してくれる良光さんは、笑顔さえ浮かべている。
さらに、その頃の家族のことにも言及した。
「もう出会ってましたね。えっとね、咲良(さくら)は生まれていました。史篤(ふみあつ)も生まれとったわ。」

長江家は夫婦と2人の子供の4人家族である。
奥さんの千昭さんに独立を反対しなかったのか?と聞いたところ
「反対はしていません。好きなことやって!って言いました。」
「自分で稼げるってあったと思いますよ。
俺がもし、そこでふらふらやって、なんかあっても、 多少自分で稼げるという、そういうのはあったと思うので今、やってみれば。 それと、自分、こういう性格じゃないですか。いやいややってて力発揮できないタイプなんですよ。
だけど、好きなことやらせれば、やる時はやるぞみたいな、それはちょっと見抜いてみたいなんで。」

まるで、夫婦漫才を聴いているみたいに、息のぴったりとした答えが返ってくる。
家族全員で、苦難に立ち向かい克服していった逞しさが滲み出ている。

はさみについて

「ほんとラーメンとか食べ物と一緒ですよ、ハサミの切れるのって。
千差万別、切れればいいというんじゃなくて、その人が好きな切れ味っていうのがあるんですよ。
あと、見た瞬間に欲しいというデザイン、あれは凄い重要です。
それって、表面の金属光沢の感じとか、磨き方とか・・・。
そこらへんは凄い重要で、まず、そこのところで持ってみたいという気にさせて、実際に切らせて、 この切れ味好きだな、嫌いだなというところで、これこういう調整できますよ、味付けできますよ。 そういう、あのー、なんだろなぁ、お客さんとほんとに個人個人、お客様との対話をしながら作っていく会社なんですよ。
そこがあるんで、僕らの生きる道はありますよ。」

職人気質を全面に出さず、飾り気のない話には驚いてしまう。
はさみを通じて、人々との出会いがあり、そこに腕と感性を磨いている良光さんがいる。

ディナウディオとの出会い

「知人が言うんですよ、スピーカーならディナウディオだよと。 なんじゃそりゃと、聞いたことないし、知らんしみたいな。」
「いいから、聴いてみろって言うんで、聴いたんですよ。そうしたら、これだ!って直観で感じましたね。」
「この出会いは偶然じゃないと思いますよ、必然に出会っている。」

長江さんのお宅は、フロントにFocus220、センターにFocus200C 、リアにIP24、サブウーファにSub250と、 ディナウディオでサラウンドを楽しめるシステムだ。
音楽好きの長江さんは、CDプレーヤーにCD100、プリアンプにPR300、 パワーアンプにAV100とAtollのシステムでピュアに2ch再生も活躍中である。

映像は、60インチテレビと120インチスクリーンを選ぶことができ、映画でも音楽でも再生能力に惜しむ事はしない。
子供たちは、大型映像でWiiを楽しんでいる。
改めて配線し直したディナウディオのシステムに満足な笑顔で聴き惚れている。
人との出会いの中でディナウディオに出会えた幸せをかみしめているようだった。

ファミリー

「うちでリラックスしている時は、仕事のことを考えたくないですね。
子供たちと話すことが好きなんで、今度は自分世界から家庭という世界に身を投じるんですよ。
勉強どうだったとか、野球はどうだとか、今度皆で買い物行こうかとか・・・。
それこそ、車の雑誌読んだり、バイクの雑誌みたりとかCD買ってきて音楽聞いたりしています。」

インタビューしている間も、息子さんの史篤君がマイクに興味を持ち、「これ、なにけ?」と、 マイクに向かって「あーっ」といたずらに来る。 そんなところからも、物おじせず、興味のあることを伸ばす教育姿勢が窺い知れる。

「家庭でおとうさんやるんも、会社で社長をやるがも一緒、まるっきり同じ。 家庭はうまくいかんけど、会社だけうまくいくって、そんなの俺ないと思う。 うん。どっちも同じだから。」

時々おやじギャグを飛ばしながら、家族について話してくれた。
奥さんの千昭さんが会社の財務と家庭のお母さんを両立させれば、 おとうさんの良光さんが社長とおとうさんを完璧にこなす。 それが楽しくもあり人生そのものと語っているようだった。

倉庫の奥にひっそりと佇んでいる一台のハーレー・ダビッドソン。
そこには、朝日が差し込みラジエーターを輝かせている。
このハーレーには、長江家と会社の絆を強くしたストーリーが隠されていた。

一年に一回のシザーズジャパン社員旅行は、フェリーで北海道に渡り、ハーレーで北海道を激走する。 
旅行から戻ると奥さんの千昭さんは、「私も北海道の風を感じたいな。」 と長江さんに打ち明けたのが事のはじまりだった・・・。 

結婚10周年目の千昭さんの誕生日に、千昭さんは自動二輪の中型免許の卒業試験に落ちた。 
項垂れて帰ってきた目の前に見たことのないリボン付きのハーレーの新車が納入されてきた。 
「これ、誰の?」と、会社の中は騒然となった。 
長江さんは、ニコニコしながら、その光景を楽しんでいた。 

中型免許の時でも自動車学校の先生から背が低くて向いてないと言われていたが、 打撲を繰り返しながらも自動二輪大型免許を一発で取得した。 
千昭さんは、大きな愛を感じて喜びを勝ち取った。 
晴れてハーレーの新車にまたがった時のことを忘れることはないだろう。 
長江さんからは、専念することの尊さを学び、人を愛することの素晴らしさを感じる事ができた。

後日、長江さんは、東京ビッグサイトで、ネイル用のニッパを販売していた。 
Nail EXPO2009というビッグイベントで沢山の人と挨拶を交わしていた。 
そのブースには、若い女性で溢れていた。 
長江さんの新たな挑戦である。