ザ・名盤シリーズ Vol.2
この「ザ・名盤」をシリーズ化させていただきます。

Vol.1は以前にビートルズの「アビー・ロード」を紹介させていただきました。

Vol.2の今回は「プログレ四天王」の中の一角「イエス」の5枚目のアルバム「危機」(Close To The Edge)を紹介させていただきます。
ここで軽く「プログレ」についておさらいしましょう。

「プログレ」とは「プログレッシブ・ロック」の略です。以前にこの「プログレッシブ・ロック」についての記事も書かせていただきましたが「進歩的なロック」という意味です。
具体的に説明しますと「1970年頃からイギリスを中心に発展したクラシック音楽の要素など複雑な技法を取り入れたロック」です。

中でも「キング・クリムゾン」「ピンク・フロイド」「イエス」「エマーソン・レイク&パーマー(ELP)」の4つのバンドは先駆け的な存在でプログレ界を大きく牽引しました。
そのためこの4つのバンドは「プログレ四天王」と呼ばれています。

「イエス」は1968年の結成から54年を経た現在でも活動を続ける驚異的なバンドです。

何と昨年は新譜「The Quest」も発表しています。
新譜「The Quest」

オリジナルメンバーは2015年ベースのクリス・スクワイアの死去により1人もいなくなってしまいましたが、それでも初期の頃からのメンバーであるギターのスティーブ・ハウ、ドラムのアラン・ホワイトは現在ででも在籍しています。
現在の「Yes」のメンバー

現在の「Yes」のメンバーです。
左から、billy Sherwood/Ba、 Jon Davison/Vo、 Steve Howe/Gt、 Alan White/Dr、Geoff
Downes/Key


余談ですが、今回の「危機」を発表後にオリジナル・メンバーであるドラムのビル・ブルーフォードは脱退し、当時イギリスのセッションドラマーとして活躍していたアラン・ホワイトが加入しました。アラン・ホワイトはそれまでジョン・レノンなどとも共演していました。

意外と知られていない事実ですが「イマジン」のオリジナルバージョンを叩いているのはこの「イエス」のアラン・ホワイトです。
イマジン

今回紹介するアルバム「危機」(Close To The Edge)は1972年発表の「イエス」の5枚目のアルバムで、「プログレ」のみならずのロック史に残る名盤として高評価を得ています。
危機のメンバー

左からRick Wakeman/key、 Chris Squire/Ba、 Steve Howe/Gt、 Bill Bruford/Dr、 Jon Anderson/Vo

「危機」はイエスの黄金期と言われたこの鉄壁の5人のメンバーでレコーディングされています。

アナログレコードの時代にA面に「危機」1曲。B面に「同志」と「シベリアン・カートゥル」の2曲。計3曲と言う彼らの大作志向の始まりとなったアルバムです。

M-1「危機」はⅰ.着実な変革 ⅱ.全体保持 ⅲ.盛衰 ⅳ.人の四季 の4つパートで形成された組曲で19分近くに及ぶ大作です。

ⅰ.着実な変革
小川のせせらぎと鳥のさえずりから静かにフェイドインして行きます・・・そして、その静寂を突き破るかの如く激しいギターのリフをフューチャーしたバンドサウンドが炸裂します。僕がこれを初めて聴いたのは中2の時でしたが、その時の脳天をかち割られたような衝撃は今でも鮮明に記憶しています。一見ギター、ベース、ドラム、キーボードがそれぞれ無秩序に勝手な事を演奏しているようですが、全体で聴くと胸が苦しくなるような緊張感に溢れたギリギリのアンサンブルを構築しているのです。
その時の僕の心の声はまさに「太陽にほえろ」の松田優作演じる“ジーパン刑事”が殉職する時の有名な「なんじゃこりゃ〜!」です。細かく心理描写すると「何だ!このバラバラだけど一つに聴こえるバンドサウンドは!こんなの聴いたことないぞ!やべー!カッコイイ!とにかくカッコイイぞ!」こんな感じです。これを一言で表現すると松田優作の「なんじゃこりゃ〜!」となる訳です。
かと思えば想定外のところで突然バンドがブレイクすると「あー」と突然のコーラス。そして場面は変わり「危機」のメインテーマをギターが奏でた後にやっと歌詞のあるヴォーカルの登場です。

ⅱ.全体保持
そのままの勢いでパート2の「全体保持」に突入します。箸休めというか、一旦終了というか次の静かな場面に移行します。

ⅲ.盛衰
一転してこのパート3は「静」です。リック・ウェイクマンのパイプ・オルガンが大活躍。
「I get up, I get down」という歌詞が印象的なパートです。

ⅳ.人の四季 
そして最後のパート4はメインテーマのリフレインに続き展開されるリック・ウェイクマンの超絶オルガンソロにまず度肝を抜かれます。その後この大作「危機」は展開を繰り広げながら感動的なクライマックスを迎えます。

大作「危機」は一つのモチーフどんどん展開させて行く手法で作られていますが、その発想がとにかく斬新で50年経った現在でも全く古さを感じさせません。

アナログレコードだと、ここでA面が終了です。

感動のため息をつきレコードをひっくり返します。

はい。B面に針を落としましょう!

M-2「同志」もⅰ.人生の絆 ⅱ.失墜 ⅲ.牧師と教師 ⅳ.黙示 の4つパートで形成された組曲で約10分の曲です。

スティーブ・ハウのチューニングが完了して彼の「OK」と言う声に続いて、アコースティック12弦ギターからこの「同志」は始まります。

この「同志」は全編を通してアコースティック12弦ギターの他にもスティール・ギターやメロトロンなどを多用していてクラシック音楽の要素がかなり濃い幻想的な美しい曲です。僕は過去に6回「イエス」のライブに行っていますが必ずこの曲は演奏される代表的なレパートリーです。

そしてアルバム「危機」はアルバム最後、M-3「シベリアン・カートゥル」に突入します。
組曲形式にはなっていませんが、これも非常に密度の濃い9分の楽曲です。

またしてもスティーブ・ハウのギターがイントロを奏でますが、今度はアコギではなくエレキです。

そしてドラム、ベース、キーボードが加わりこの「シベリアン・カートゥル」の印象的なリフが始まります。「危機」と同様に4人それぞれが勝手に演奏しているような“奇妙”なサウンドですが、全体で聴くと途方もなくカッコいいのです!これも「なんじゃこりゃ〜!」ものです!

曲はドラマチックに展開して行きジョン・アンダーソンのヴォーカル登場です。
途中「アルプス一万尺」の節が出て来ます。ご確認ください!

「同志」がクラシカルな要素が強かったのに対してこの「シベリアン・カートゥル」はイケイケのロック的要素が強い曲です。ただし全編に渡ってそれぞれのモチーフに“ここまでやるか!”と言わんばかりの細かい工夫が施されており“プログレ指数”を上げています。

様々なドラマチックな展開を経て「シベリアン・カートゥル」は初めの印象的なリフに戻り、その上でスティーブ・ハウの無国籍なギターソロがフェイドアウトで終わり、この曲とともにアルバム「危機」も幕を閉じます。

トータル38分の「危機」の旅が終わると毎回、感動のため息しか出ません・・・

「何てカッコイイんだ・・・」

音楽だけでなく文化・芸術作品の真価は時間が証明するケースが多々あります。
制作から50年経った現在でも色褪せないアルバム「危機」は間違いなく“名盤”と言ってよいと思います。
ご存じない方は是非とも聴いて頂けたら幸いです!(サトーB)